キリスト教といえば聖書、聖書といえばキリスト教。聖書が先か、キリスト教が先か。『聖書』がキリスト教の経典だということはよく知られていますが、では聖書とはいかなる書物なのかとなると、それほど知られてはいないのではないかと思います。
学生のころ、友人に「聖書ってキリスト様が書いたものなんだろ?」と言われたことがあります。目からウロコというか「ああ、一般にはそう思う人もいるだろうなあ」と思ったものでした。
しかし、聖書はイエス・キリストの著作ではありません。なにしろイエスが生まれる以前のものも含まれているのですから。
こう言うと「ちょっと待て、キリスト教の教典なのに、なんでキリストが生まれる以前のものが入ってるんだ!」と思う人もいるかも知れませんね。
聖書とは
その答えは「キリスト教はユダヤ教を母体として生まれた宗教であり、両者の間にはいわば親子関係がある」ということです(『雑学3分間シリーズ 聖書』山我哲雄著/PHP研究所・12ページ)。
聖書とは、ごく大ざっぱに言って「古代イスラエルの宗教関係の文書を1冊に集めたもの」です。
そして、それを「イエス・キリスト以前」「イエス・キリスト以後」のどちらの時代に書かれたかによって大別して「旧約聖書」「新約聖書」の二部構成にしています。
旧約・新約という2冊の聖書があるのではなく、一つの『聖書』の「旧約の部」「新約の部」に分けていると言えます。
旧約聖書は主にヘブライ語、新約聖書はギリシャ語で書かれていることから「ヘブライ語聖書」「ギリシャ語聖書」と言語によって分類することもあります。
よく知られた「天地創造」「アダムとイヴ(エバ)」「ノアの箱舟」「モーゼ(モーセ)の十戒」等の物語が出てくるのは「旧約聖書」であり、これらはイエス・キリストよりもはるかに過去の時代のことが語られています。
イエス自身も、またイエスの弟子たちも「キリスト教」という新たな宗教を始めたというより、彼ら自身の意識としてはあくまでユダヤ教徒でした。「イエス・キリストはクリスチャンではなかった」というと変な話のようですが、彼らは自分たちの経典として「旧約聖書」を重んじたのです。

(もちろん当時は「旧約聖書」に対する「新約聖書」が存在しなかったので「旧約」という呼び名はありませんでした。それに、その旧約聖書も、現在、我々が持っているものと必ずしもイコールではありませんでした。この点は別の機会にお話したいと思います)。
そして、イエス・キリスト出現以後のことが記されているのが「新約聖書」というわけです。